双極性障害

双極性障害

かつて双極性障害は、躁うつ病と呼ばれていました。一回以上の躁病期間があるのが特徴の疾患です。

双極性障害は心理療法によって薬の不要なレベルまで改善できます

催眠

双極性障害は、躁うつ病と呼ばれ、一回以上の躁病期間がある疾患です。躁病のエピソードと、大うつ病エピソードを繰り返すものを双極T型障害とは呼んでいます。そして、完全な躁病エピソードの代わりに、期間の短い軽躁病エピソードと、一時的な大うつ病エピソードが入れ替わるものを双極U型障害と呼んでいます。双極性障害U型の診断を受ける患者さんが増えていますが、再発性の大うつ病性障害と区別することが非常に困難です。そのため診察する医師によって、診断がコロコロ変わることもしばしば見受けられます。


双極性障害の多くは、背景に気分循環性があります。これは、クレッチマーの分類した気分循環性気質のことで、病気というより、個性、人間のタイプということなのですが、この気分循環性を背景として、それに重ねるように、気分障害のエピソードが出現してくることが一般的です。しかし、診断基準があいまいであるこの疾患は、いまだによくわかっていないことも多く、医師によっては一生、薬を飲み続けるしかないという医師もいますが、その一方で、適切な心理療法の結果、完全に薬が不要になり、健常な日常生活に復帰するケースもしばしば見られます。


薬から脱却できるケースは、心理療法によって認知の歪みを是正することができた事例に多く、自己の心理的な統御を習得すれば、気分循環性気質であっても、社会と葛藤なく、平穏に協調できるのです。したがって、最近では、うつ病だけではなく、双極性障害にも、認知行動療法をはじめとする心理療法を広く行っていくべきだと理解されはじめています。こうした方法によらない場合に、改善がないまま薬漬けになって、十年も二十年も横ばい状態でメンタルクリニックに通い続けることになります。双極性障害の診断がつけられると、バルプロ酸や炭酸リチウムを処方されることになります。最近では、エビリファイなどを併用するケースも増えています。


こうした向精神薬は、副作用も強く、リチウムではその血中濃度の定期的な測定を守ってリチウム中毒を防止しなければなりません。それなのに、精神科医の中には、血中リチウム濃度の検査を怠るケースもあり、注意を要します。リチウムの重篤な副作用を発見するためには腎機能、甲状腺機能、心電図の定期的なモニタリングが不可欠です。このような危険のある薬ですが、症状が重篤な場合は、一時期、使用せざるを得ないこともあります。しかし、いかなる症状も患者の心理的ストレスや葛藤が関与して重くなったり軽くなったりするのですから、心理療法により、認知の歪みを是正することは、うつ病と同じく、根本的な治療になるのです。


双極性障害は一生、薬を飲み続けなければならないという医師もいますが、実際には、薬を脱却できて、完治した患者も多くの医師により、報告されています。薬を使用しない精神科医の治療報告でも、重篤な状態からでも薬を減らせた事例が取り上げられています。認知行動療法や、それが発展したさまざまな心理療法があり、双極性障害の場合も心理療法を行いつつ、薬を減らしていくといった方法で、減薬や断薬が可能になることもあります。


すでに長年の服薬歴がある患者や、重篤な患者は、急な断薬は症状の悪化を招くため、素人判断で行わず、必ず理解のある主治医と二人三脚で双極性障害を心理療法で完治させ、最終的に薬が不要な状態まで到達することをめざすほうが安全です。双極性の気分の循環は、人間の自然な姿であるともいえます。よいことがあれば、気分が高揚し、悪いことがあれば、気分が落ち込むのは人間の自然な姿です。それが一定以上に極端な双極性の変調をきたすとき、病気としてとらえられるというだけであり、メンタルトレーニングによって、極端なところがなくなれば、それはもう双極性であるというだけであり、病気とはいわない状態です。


心理療法としては催眠療法も有効です。催眠療法はヒプノセラピーとも呼ばれているもので、潜在意識にアプローチして、思考の悪習慣、悪癖を修正し、メンタルを癒します。 内服治療と併用しながら、心理療法に早く取り組むことで、最終的に薬依存の人生から脱却し、心身の健康を取り戻せるのです。

セラピー
久保征章の著書