発達障害グレーゾーン

発達障害グレーゾーン

発達障害や境界知能のグレーゾーンに該当する人は意外に多く、グレーゾーンでは医療機関ではっきりと、診断されないために、生きづらい状態のまま暮らしている人が多いのです。

障害未満の状態をグレーゾーンという


精神科医の岡田尊司先生が、たいへん有益な書籍を出されたので、ご紹介いたします。題名は『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』という本です。いま、増え続ける「グレーゾーン」の問題を最新の知見と臨床経験を背景に論じた書物であり、正しい理解と克服法が、一般の人にもわかりやすい文章で解説されているものです。発達障害やパーソナリティ障害や精神疾患などの診断の基準を満たすまでの症状はないが、かといって何の問題もないわけではない、というグレーゾーンに属する人というのは、意外に多いということです。医師による診断はたとえ医療機関を受診したとしても、基準を満たさないので、その病名をつけられて治療が始まるということはないため、本人は、「障害未満なのに、こんなに生きづらいのはなぜなんだろう」と葛藤しながら、暮らしている状態です。こうした状況にある人々が、自分自身の傾向を自己診断して、確認し、克服の方法を学び、自分の気づきと心がけなどの努力によって、生きづらさを解消できることをめざして書かれている本です。
発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法

 

この本の中では、生きづらさの問題を抱える人々について、「こだわり症」、「社会的コミュ障」、「疑似ADHD」、「愛着障害」というように種類別に詳しく解説しています。大人のADHDの多くは疑似ADHDであるそうです。愛着障害などを背景に起こるのが疑似ADHDです。こどものADHDは成長とともに改善するのに対して、疑似ADHDは、12才以降に発生するものも多いとのことです。HSPと不安型愛着スタイルについても詳しい解説がのっています。発達性協調運動障害、境界知能、学習障害についても、最新の知見にもとづいて、その克服のための取り組みについて詳細な解説があります。グレーゾーンの人は、愛着の問題を抱えた人が多いということも述べられています。その意味で、愛着障害の克服の取り組みは、グレーゾーンの人々が、生きづらさから救われるために、必須の課題であると思います。ぜひ、本書を多くの人に読んでいただけたらと思います。岡田尊司先生は、数々の名著がありますが、本書はその中でも、最高の一冊ではないかと拝察いたしします。

久保征章の著書