愛着障害と心の安全基地

愛着障害と心の安全基地

親からの虐待を受けて育つと、愛着障害になることが知られてきましたが、明確な虐待ではなくとも、強い束縛、交換条件、言葉の暴力などを受けることで、多くの人が愛着障害になります。

愛着障害は親との間の愛着形成が不完全

催眠
愛着障害とは親との間の愛着形成が不完全なまま育った人にあらわれます。親あるいは親代わりになる大人から、無条件の愛や安全、安心の心の安全地帯を与えられて育つことで、人は、他人との間に健全な愛着関係を形成することができるようになります。つまり、恋愛や結婚において、健全な関係を創造できるのです。親からの虐待を受けて育つと、愛着障害になることが知られてきましたが、明確な虐待ではなくとも、強い束縛、交換条件、言葉の暴力などを受けることで、多くの人が愛着障害になることが明らかになってきました。

軽度のものを含めれば、三人に一人がなんらかの愛着障害をかかえているとも言われています。愛着障害に由来する「見捨てられ不安」や「対人依存」などは、恋愛関係を難しいものにしてしまいます。昔から言われてきた「恋愛依存症」というものの正体が、この「愛着障害」にあることが次第に明らかになってきたのです。これら愛着障害について、正しい知識を得て、理解を深めることで、無意識に抱いていた「見捨てられ不安」や依存的な行動様式を修正することができます。

自覚して、客観視することが、自分の行動の問題点を認識することにつながり、それをきっかけにして、行動様式が変容していくのです。催眠療法の一つに「前世療法」というものがあります。これは前世占いとは違います。催眠状態になると、人間は過去の記憶を自由に思いだすことができます。本人がすでに忘れた数年前のある日の出来事を思い出すことも不可能ではありません。

そのような過去の時間軸へ戻る催眠を退行催眠といいます。前世療法とはこの退行催眠の一つなのです。名前のとおり、前世まで戻る催眠療法です。前世へ戻る方法にはいろいろなアプローチがあります。催眠状態になった自分が、「前世の世界」へつながる階段を降りていく催眠誘導を行うものが一般的です。そして、前世療法は愛着障害の解消にも大きなパワーを発揮できる心理療法です。

「機能不全家族」に育つ場合は「愛着障害」になりやすいのです。「機能不全家族」とは、家族が本来の機能を損なっている状態です。子供には、本来、無条件に保護されたいという欲求があります。子供が育つ家庭で、この無条件の保護、安全、養育が得られないと、子供の無意識の中に、悪い人生脚本ができあがっていきます。これが成長してからの子供の運命をも左右するものとなります。

愛着障害の人の心の中には、「禁止令」と称される無意識の禁止命令がちりばめられています。愛着障害の治療によって禁止令は解除されます。禁止令とは、アダルトチルドレンなどを扱う心理学でしばしば言及されているテーマです.。幼児期に、親からの過干渉、束縛、過剰な支配、価値観の押し付け、といった自由意志の侵害を受け続けることで、心の中に、悪い暗示ができあがるものを指します。

例えば、「私は生まれてきてはいけない子なんだ」「私はダメな子だから幸せになっちゃいけないんだ」「私はほめられるような存在じゃないんだ」「私には何の価値もないから早く死んだほうがいいんだ」このような悪い暗示が心の中にできあがるのです。これは、はっきりと言語化されないまま、漠然としたイメージとして存在している場合も多いです。このマイナス暗示が人生脚本をゆがめ、潜在意識を左右し、人生を操縦していきます。悪い方に誘導してしまうのです。

その結果として、愛着障害が発生し、それが進むとパーソナリティ障害のいずれかの型になって、最終的に、メンタル疾患として診断されていくことも多々あります。この意味においては、すべてのメンタルの不調のその根源には愛着障害があるということになります。禁止命令を解除していくためには、意識して、正反対の言葉を自分に言い聞かせるのです。「私は幸せになっていいんだ。」(鏡をみて自分に)「生まれてきてくれてありがとう」(インナーチャイルドをイメージして)「生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ」「あなたは幸せになっていいんだよ」このように毎日毎日、言い聞かせていく必要があります。自覚して行う必要があります。

そして、人から賞賛されたり、ほめられたり、評価されたり、承認されたら、それを素直に受け取るように心がけましょう。「そうじゃない」と叫ばないことです。その人から見たら、私はそう見えるのだな、という感じからでかまいません。拒否せず、素直に受け取ることを練習しましょう。「ありがとう」と言って受け取るのです。それは内心の禁止命令を壊す一つの力となります。ブロックを外すことになるのです。他者をほめることは素晴らしいことですが、賞賛を受ける側に立ったら、感謝して受けましょう。すると、あなたの潜在意識は変り始めます。

幼児期の体験が、「愛着障害」をもたらし、成長してからのストレスをきっかけにメンタルの不調へと発展するケースは多いです。子供に毎日、「生まれてきてくれてありがとう」と声をかけてあげ、しっかりと抱擁して抱きしめてあげることを毎日してあげましょう。そして、「ほめる」「承認する」「共感する」「受容する」ことです。幼少時にこれらの愛情表現を十分に言葉と態度で受けとれない場合、「愛着障害」を抱えてしまい、恋愛や対人関係を歪めてしまうのです。すでにそうなっている人は、前世療法を受けることで、改善の良い流れを生み出すことができます。前世療法はあなた自身の心の中に「心の安全基地」を形成することを促進してくれるのです。

セラピー
久保征章の著書