スポーツ心理学

スポーツ心理学

スポーツ心理学は脳科学と重なる領域を含み、主に健常者を対象としていますが、本来はすべての人に適応する原則を説いています。

スポーツ心理学はすべての人に役立つ

催眠

スポーツ心理学という学問が注目されるようになりました。ラグビーの日本代表を勝たせたのも、優秀なスポーツ心理学者がメンタルコーチとなり、すべての選手のマインドセットを改革したためだといわれています。


スポーツ心理学の理論は脳科学と成功哲学を融合させたものであり、スピリチュアルではなく、脳機能や、臨床心理といったサイエンスを背景にまとまっています。それは、主に健常者が、最高のパフォーマンスを発揮するためのノウハウだとされていますが、


実際には、メンタルヘルスを損なっている人や、メンタルクリニックに通院中の人であっても、その理論を病気を治すためにそのまま適応させることができる内容です。スポーツ心理学では、「マインドセット」の構築を重視しています。マインドセットとは、生きる上での心構えであり、さまざまな物事をどう観るかを左右します。たとえば、成功というのは、知能と才能の産物であるとみなしてきたのが古い時代の常識です。スポーツ心理学では、成功とは、「ハードワーク」と「レジリエンス」の産物だと考えます。


マインドセットを改革すると、「新しい経験」を恐れずに飛び込めるようになります。そして、新たな技術や知識などを「習得することへの情熱」が生まれます。さらに「限界を決めない」という姿勢ができあがるので、自分の壁を超えることができるようになります。ハードワークというのは、一生懸命に努力をすることです。いつも学ぶ姿勢を大切にし、失敗やミスは、すべて経験であり学びであると受け止めます。レジリエンスとは、精神の強靭さのことですが、これは、困難を乗り切る力であり、挑戦することに、うまく取り組む力です。


レジリエンスを育てていくには六つの側面があります。まず、一番目に、自己理解が大切です。自己理解というのは、自分について気づくことです。自分の感情や興味、好きなこと、そして、強味、持ち味、そして課題。これらから自分とは何かを理解するのです。そして、二番目に、自己制御力を養います。気持ちと行動をコントロールする訓練です。良くない感情や、イライラ、不安などを、考えることや書くことや伝えることや行動することで、うまくコントロールして自己制御をめざします。


困っていることを周囲に伝えて、協力を依頼することや、散歩やティータイムなどの気分転換を上手に確保することも、すべては自己制御力を高めていることになります。三番目に、楽観性(オプティミズム)です。グラスに半分そそがれたワインをみて、「あと半分しかない」、と受け止めるか、「まだ半分も残っている」と受け止めるか、それだけで、気分まで違うものになります。


四番目には、機転をきかせることです。これは広い視野で物事を考えたり、新しい方法を取り入れることです。物事には自分がコントロールできることと、自分がコントロールできないことがあります。自分の感情や気分や行動の内容は自分がコントロールできることです。これに対して、他人のそれはコントロールできません。


いま、自分にコントロールできるものは何かを見極めて、そこに全力をつくす時、はじめて、困難を乗り越える道が開いていくのです。五番目に、持ち味を活かすことです。持ち味とは自分の中にある強味のことです。自分の強みを武器にするのです。長所や短所という切り口ではなく、持ち味として自己観察をすると、新しい自分を見出します。


六番目には、他者との関わりを大事にすることです。他者との共感、助けたり助けられたりするつながり。人は助けを求めたり、助け船を出すことで、他者とつながっていきます。このような六項目を整えると、心のレジリエンスが育ちます。スポーツ心理学では、「モチベーション」を重視します。どうすれば、モチベーションが生まれるのでしょうか。メンタルヘルスを損なうと、人は「死にたい」「消えたい」などと発想する場合もあります。その場合は、「生きるモチベーション」を見失っているのです。


「モチベーション」は、自主性から生まれます。人として自由意志を発揮できる状態がモチベーションには必須です。誰かから命じられたことだけしかできない状況はモチベーションをなくすのです。そして、達成感を感じられることも、モチベーションには重要です。そのためには、努力や成長の過程を評価されるべきで、順位や順番や数字で判断してはなりません。


スポーツ心理学を熟知した指導の方針を持つ、コーチや監督がいるスポーツのチームは、選手の能力が最大限に発揮されるようになります。いま、スポーツの世界は、スポーツ心理学を熟知した指導者を求めています。メンタルの仕組みを知り、選手のマインドセットを改革できる指導者がチームを率いれば、どうなるでしょうか。


失敗を避けるよりも、できることを成し遂げる、というこに価値を見出し、失敗したら、それは経験であり、学びであると受け止めて、何度でもやり直すという心がけを大事にします。勝つか、負けるか、白か黒かの二分思考を捨てて、成長速度は人それぞれであることを認め、他者と比較するのではなく、過去の自分と比べて少しでも成長すればよいという視点を育てます。効果的な目標設定を行い、達成できないものは達成できるものに変更し、今に集中するように導きます。


そして、このような導き方は学校の教師をはじめとするあらゆる教育関係者に必須なのです。精神科医、心療内科医や、臨床心理士にも必要なことです。経営者や子育てをする親にも必須でしょう。すべての人は、自分の人生への「モチベーション」を維持できる理想的な「マインドセット」を構築することで幸せな人生を創造することができるようになるのです。それが、メンタル疾患を治したり、人生におけるさまざまな苦悩を乗り越える道を開きます。マインドセットの中でも、もっとも強力なものが、前世療法的世界観から生まれる人生観だといえるでしょう。
セラピー
久保征章の著書