不安定型愛着障害とは

かつてはひどい虐待や育児放棄の事例ばかりが問題視されていましたが、一般家庭でも、幼児期の両親との接し方の歪みにより、簡単に不安定型愛着障害が起きていることがわかったのです。ほとんどの恋愛の苦しみ、結婚の苦しみがこの愛着障害からきているとしたら、この問題を抜きにして結婚も幸せな夫婦も語れません。実はカップルのどちらかが不安定型愛着障害をかかえる確率は50パーセントにもなることがわかっています。さらには三人の人がいるとすると、そのうち一人が不安定型愛着障害をかかえる可能性は70パーセントもあります。対人関係や生き方の特性を根底で支配している愛着障害を理解することで、誰でも幸せな恋愛と結婚を実現できるのです。自覚することではじめて克服するための第一歩が開かれます。その意味で、まずどのようなものかを理解することが不可欠です。愛着障害とは幼児期に母親および父親からの適切な愛情を受けられずに生育することで生じてきます。

反応性愛着障害

それはDSMアメリカ精神医学会でも反応性愛着障害として診断基準がまとめられています。幼児期の虐待やネグレクト、養育者がしばしば交代するなどの状況で、特定の人(母親)への愛着が損なわれることで、この反応性愛着障害がおこります。誰にも愛着しない警戒心の強いパターンになるものを抑制性愛着障害と呼び、誰にでも愛着行動を示してしまうものを脱抑制性愛着障害と呼んでいます。抑制性愛着障害はごく幼い頃に虐待されたり、育児放棄されることでおこりやすいものです。こうした愛着障害をかかえたまま大人になると恋愛と結婚に大きな障害となってしまいます。ところが一般の児童でもその3分の1が不安定型愛着のパターンを示すことがわかってきました。つまり成人の3分の1の人は、対人関係で困難を感じやすく、恋愛や結婚がうまくいかない悩みを抱えているということです。もちろん、程度の差がありますので、克服して幸せになる事例も多いのです。恋愛や結婚を健全に営めない愛着障害が増加しています。それは、養育環境の関与で生じるものです。

共働きの問題点

その原因として大きいのが共働きの増加による親の不在です。0歳から保育園に預けられたり、愛着の臨界期とされる生後半年から、一歳半までの時期に、特定の母親と言う存在からの、十分な保護と愛情を受けられなかった子供が増えているのです。一歳半までの時期、養育者である母親との接触時間が不足すると、安定した愛着の形成ができません。さらに、臨界期のあとも母子分離期とされる微妙な時期が、二歳から三歳にかけて存在します。この時期に母親が愛情深く、密度濃く、たっぷりと時間をかけて子供を養育すれば、健全な愛着スタイルが育つのですが、おそろしいことに日本社会ではそれが不可能になってきているのです。働け働けと保育園に早期に入れて、母親と子供が分断されます。これが「愛着障害」最大の原因ともいえるものです。短時間は別として、長時間保育園に預けることは四歳からしかできぬようにし、それまでは育児給付を国が与えて、母親が育児だけに専念できるようにしなければなりません。そうしなければ、日本社会に愛着障害があふれ、それが結婚しても離婚するケースを増やし、少子化を促進していくのです。

親が愛着障害なら子供も愛着障害に

愛着障害は幼い頃の母親との死別や離別でも起こりますが、その場合に、代わりとなる養育者がいて、その人に十分な愛情をもらえば、悪影響は小さくなります。しかし、過保護に育てられたり、養育担当者が複数かかわるなど、ちょっとした影響で、マイナス影響となります。それだけ母親の代わりは難しいということです。愛着障害をもっている両親に育てられることで、その子も愛着障害になってしまうこともわかっています。親から受け入れられ、評価されることで子供の自己肯定感は強まるのですが、親の受容と愛が不足することで愛着障害となるのです。母親は子供にとっての安全基地であり、この心の安全基地が機能していれば、健全な対人関係を構築できるようになるのですが、それが欠けていると、誰彼なく身近の人を安全基地に見立てて、その人にすがりつくような行動をとります。

恋愛依存も愛着障害が原因

しばしば恋愛依存症といわれるものも、これが恋愛において出たものといえます。こうなると、恋愛対象に依存していき、最後は相手の負担になってしまうので、関係は破綻してしまいます。すると、またすぐに別の依存対象を見つけて、同じことを繰り返すのです。そのため、いつまでたっても幸せで安定した家庭をつくることはできません。恋愛や結婚が非常に難しいタイプが回避型の愛着障害です。回避型愛着スタイルは、独立独歩のライフスタイルをとりやすく、それが恋愛、結婚生活では支障となります。回避型と不安型の愛着障害をあわせもつタイプの人は、不安や抑うつ、悲嘆などの反応に陥りやすく、薬物やアルコールなどに逃避することもあります。

愛着回避とは

愛着回避とは、親密な対人関係を避ける傾向であり、愛着不安とは、その親密な関係を不安に感じて、さらにその不安から逃れようと、依存度をましてしまう傾向です。回避型の愛着スタイルの人は相手から依存されたり頼られることを嫌い、それを怒りによって反応する場合も多く、これが夫婦関係を破綻させて離婚へと走らせることも多いのです。回避型になるのは幼児期のネガティブ体験を心の奥底に封じ込めて、いわば凍りつかせていることによると考えられ、こうしたタイプは、幼い頃の経験を素直に話題にできない傾向があるのですぐに見分けられます。
このタイプの人の特質の理解者となり、うまく距離をとりながらも凍りついた心のトラウマを癒していくことができれば、心を開かせることができます。愛着不安が強すぎるために、愛する人がかえって離れていくという悲しい経験を重ねてしまうのが、愛着障害の人のパターンです。それを防止するには強すぎる不安をコントロールしなければなりません。それには安全基地となる人がいてくれるのがもっとも良い対策です。親の代わりであり、甘えを許して受容してくれる人であり、どんなときでも一定のゆるぎない器で応じてくれる心の安全基地。それが恋人やパートナーであれば、愛着障害が改善することも多いのです。

過去との和解

愛着障害の克服の過程として「過去との和解」が必要です。母親や父親へのネガティブなとらわれを脱し、自己肯定感を取り戻すためにも、この過去との和解が不可欠です。その鍵は否定的認知を脱却することです。つまり、すべてにおいて否定的に認知する傾向を克服すべきなのです。それには全か無かという二分法的な認知ではなく、統合的な認知が育つ必要があります。二分思考の克服、否定的な思考癖の克服、教義的思考癖の克服が必要になります。「見捨てられ不安」を克服するということです。そして自分が自分の親になるという段階を踏むようになると克服できます。愛着の傷の修復をするには、自分が自分の親になり、自分が親として自分にどうアドバイスするかを考えるワークが有効です。自分の中に理想とする親を持ち、その親と相談しながら、生きていくようにすると、理由のない自己嫌悪から脱却できるのです。その自分の中の親的存在として、人によっては神様や仏様の存在をそこにあてがうこともあります。

心の安全基地を作る

これが宗教的な心理療法の効果ともいえます。もちろん、神仏でなく歴史上の偉人を手本にして、坂本竜馬と心で語るなどの方法をとる人もいます。あるいはマザーテレサに傾倒して、心の師とすることで、愛着障害を克服する人もいます。自分が自分の親になるという方法は、心の安全基地になってくれる身近な人がいない場合に大きな助けとなる方法なのです。哲学や宗教を学ぶことで自力で愛着障害を克服する人も多いのです。仏教で行われる内観法や、感謝の修行なども、すべて同じような効果があります。つまり、愛着障害を克服しうる心の筋力トレーニングとなりうるのです。
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